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箱ものの思い出_「栃材擦漆仕上硯箱(とちざいすりうるししあげすずりばこ)」
このころ、色紙箱、短冊箱など、箱ものをよく作っていました。1994年伝統工藝展への出品作品ですが、銀の隅金物、サンドペーパーを使わずに刃物の跡を残す技法に自信がつき始めた思い出があります。刳りもの(くりもの・彫りだして作る技法)が得意とする丸みを帯びた形ですが、薄づくりができる指物技法で制作するために、数種の豆鉋を作ったのは、直線構成になりがちな指物に力強い自然の中の形を取り入れたい思いからです。組み立てる前に漆を塗り、固める前の微調整をするときに、刃を漆にまけないハイス鋼でつくるのが自分の中で定着したのもこのころでした。住宅も含めて箱というものは大切なものを入れる覆いだと思いますが、中身を考えずに銘木や技法に走りがちなこれらの制作に疑問を感じ始め、住まいであればどういう生活を中身とするのかを考えるきっかけとなり、以後しばらくは箱ものから遠ざかっていました。硯、色紙、短冊などが消えていくのは淋しい気がします。
06.6.5
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