「 小さな鏡台 」


ひところの嫁入り道具三点セットは、桐箪笥、洋服箪笥、それに鏡台だった。
それらは現代の住宅空間の建築付随物に置き換わり、皆同じような化粧室で身繕いをするようになった。
しかし合理と機能優先は、僕達から生活の楽しみを奪うようでなんとなくさみしい。
女性がお気に入りの鏡の前で化粧する姿は可愛げだが、今はあたりはばかりなく、電車の中でぺたぺたと忙しくやっている。

それが面白くなくて、小さな鏡台を作ったのはいつごろだっただろうか・・ひとつは今は娘の寝室で使われている。



心を込めてつくられた美しい布を飾って楽しみたいと、こんなハンガーが無骨に付いているが、
今は鞄好きな娘のBREEが日光浴をしていたりする。
小さな引き出しをつけたが、少数の大切なものの居場所になってほしい。


鏡をぶら下げて角度を変える構造には 燐青銅を使ってみたが、重力と弾力は人力と違い永遠である。
正方の鏡の四隅に銀を飾って古びるアクセントとしたが、磨くといつでも輝きを取り戻すことが出来る。
難しい かしめ の仕事のために、形に合わせて作った鎚を作って備えた。
なんどか練習し、やがてうまくいくと、心は達成感に満ちあふれた。

現代は使い捨てのものを作って、経済を成り立たせる宿命を帯びている
消費して買い換えることと、豊かさが同義とされて、失われるものは物体だけに留まらない。