前田南斎・木工展
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前田さんが作った木の椅子に味ってみると、ぴったりくるやさしさがある。きっと冬には人の体温と一緒になり、夏にはヒンヤリした自然の感触を味わえるに違いない。 「椅子の注文を受けて、その人のお尻の形や大きさを想像しながら作っていく過程がおもしろいのかもしれませんね。(木工は)相手の人のために作るものですから、規格平均値で作る大量生産になってしまったら個性がなくなってしまいます」 |
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東京銀座の和光ホールでこの9月、初めての個展『前田南斎木工展・くらしに木を生かす」を開いた前田さん。テーブルの表面に波打つような削り面(鉋目・かんなめ)にそっと触れてみると、テーブルの面は鏡のように平らなものという考えかたは、仕上げの一方法でしかないことに気がつく。使う人の身になって作ったひと削りひと削りの感触が伝わってくるようだ。 コミニケーション。木と椅子やテーブルの一つひとつにも会話する余地がたくさん含まれていることを改めて感じた。 |
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前田さんが6年前から移り住んでいる松本の美ヶ原にある工房を訪ねた。信州の山々が美しい。敷地3000坪の中に、南の陽射しをいっぱい浴びた工房。大小さまぎまな工具類。100とも200とも自分では数えたことがないという飽(かんな)達。 使い込んでいくうちに大から中へ、小へと形を変えながら手になじんだものばかりと聞く。また、居間には大きな四角い座卓を囲むようにした背もたれだけの椅子。床にクッションを置くだけで優に12人位は座れてパーティが開けそう。個展にも大きなテーブルと2m10cmある木のソファが出品されていた。あれが置けるのはどれくらいの大きさの部屋だろう。 「8畳くらいあれば充分ですよ、でも皆さん置けないという。身の回りにあまりにもたくさんのものがあるからではないでしょうか?」 前田さんはこうした生活道具を通して生活スタイルを提案したいという。たとえばTVを見るのに具合かいいのは細長いテーブルと椅子で、家族の団らんには円いテーブルがいいという。個展の会場には、木の材質や色などの特徴を生かしたチェスボードや、ミュージック・キャビネット、折りたたみのできる椅子、手軽に持ち運びのできるライティングデスクなど。天気のいい日は庭に出て、手紙を書くのににいいかもしれない、などと、ふとイメージさせるものがあった。 会場で「木っていろんなことができるんですね」という声も聞かれた。「家具は100年、200年使ってもらいたいのです。木はどれも気の遠くなるようなを経て大きくなったものです。使っている間に次の木が大きく育っていなければ、自然のバランスが崩れてしまうことになります」 100年、200年使っても飽きない家具には、また不変的な美が備わっていなければならないという。 |
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樹脂というのは、僕達が使う漆や自然オイル、ヴァイオリンを弾くのに欠かせない松ヤニ、或いは天然ゴムとか、切手の裏の糊などの原料になる、安全な自然物です。 合成樹脂とは、ビニールやプラスティックのことで、他に合成皮革や合成洗剤などもそうですね。 たとえばテーブルに置いたものを引き寄せた時、きずがついたとしても、そのきず跡に生活があり、人生が刻まれていくという。 東京中央区生まれの前田さんが、美しが原に移ったのは、最近流行の田舎志向ですか? 「木工は、木端が出ます。木は本来燃料で、灰は肥料となって自然が営まれ、自然のサイクルがあるのですが、都会では、木を燃やせば近隣に迷患をかけることになります。それで産業廃棄物として処理してもらおうとすると、石油を使って燃やすことになるわけです。そこに疑問を感じていました。都会ではこの仕事がやりずらくなっているのです」と。 お爺さんの代からつづいた3代目。江戸指物の環境の中で育ってきて、「ここに来て自分をゼロにすることができた」という前田さん。 使い込んだ鉋の刃を研ぎ、少しずつ形を変えながらもさらに使い込んでいく。小さなものは人差し指くらいになっても用途に応じて大切な道具として役立たせている。仕事で大切にしていることは「心ですね」と。 テーブルや椅子を使う人のことを思い、鉋の一つひとつを大切にし、自然と関わりあってこそ、木のぬくもりを感じさせる仕事につながるのかも知れない。 |
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